住宅・建築SDGs推進センター理事長賞第2回SDGs住宅賞
「だら挽きの家」

| 建築主 | 個人 |
| 設計者 | 岩元真明+千種成顕(ICADA) |
| 施工者 | 株式会社榊住建 |
| 建設地 | 埼玉県さいたま市 |
| 構造 | 木造軸組工法 |
| 階数 | 地上2階 |
| 延床面積 | 112.98m2 |
講評
「だら挽きの家」は、施主・設計者・施工者・木材事業者が、熊本の大径木の選木から乾燥・加工までを共に確認しながら進めた、素材と建築の関係を丁寧に組み立てたプロジェクトである。その協働のプロセスが、建物の骨格や空間の質に率直に表れている。内部に入るとまず、大径木がそのまま柱や梁として現れ、空間全体に“森のような”奥行きが感じられる。幅も癖も異なる挽き板が連続し、自然の木々に囲まれるような落ち着きと豊かさをもたらしている。これは意匠表現ではなく、木材を無駄なく使い切り、建物内部にストックとして抱え込む構法が生み出す独自の空間体験である。
構法面では、一般的な住宅の数倍に及ぶ木材量を扱いながら、端材は羽柄材や造作材として活用し、残材をほとんど出さない計画が貫かれている。一本ごとに寸法の異なる材を現しで用いるための設計と施工の調整も丁寧で、開口部やスリットの寸法にも材の幅を読み取った工夫が見られる。
特筆すべきは、この“森のような内部”が密集住宅地における性能と両立している点である。外壁は防火性能に優れた窯業系でしっかりと包み、外断熱によって高断熱・高気密を確保しつつ、必要な部分だけスリット状に外へ開き、光や風を適切に取り込む。外側は控えめでありながら、内部では大径木の力強い空間が立ち上がるという対比が、本作の独自性を支えている。
木材調達の距離には議論の余地があるものの、大径木活用という社会的課題に対し、構法・空間・性能を一体的に見直して応えている点は意義深い。森林資源と住宅のつくり方をあらためて結び直す姿勢は、今後の木造住宅にも示唆を与える。
総じて本作は、素材の扱い、構法、環境性能、空間体験のいずれにも新しい視点をもたらす提案であり、内部に“森のような豊かさ”を引き込みながら、快適性と持続可能性を高いレベルで両立させている。資源循環の考え方とも親和性が高く、SDGs の理念とも響き合う。こうした挑戦と成果を備えた本作は、SDGs住宅賞・IBECs理事長賞に相応しい作品である。

